放送回 |
担当講師 |
テーマ |
内 容 |
第1回 |
工藤 庸子
(放送大学教授) |
セルバンテス
『ドン・キホーテ』
(一) |
・ はじめに — 文学作品を耳で愉しむ。
・ 音読か黙読か — 物語文学と翻訳の問題。
・ 講談ヴァージョンで聴く「風車の冒険」
— あまりにも有名なエピソードのどこが面白いのか。
・ アラビア人の原作者シデ・ハメテ・ベネンヘリと
謎の「第二の作者」。 |
第2回 |
工藤 庸子
(放送大学教授) |
セルバンテス
『ドン・キホーテ』
(二) |
・『ドン・キホーテ』後篇を読む
— 錯綜する幻想と現実。
・ 村の知識人サンソン・カラスコと
従者サンチョ・パンサ。
・ 講談ヴァージョンで聴く「森の騎士との決闘」。
・ 狂気の終わりと主人公の死と物語の幕切れ。 |
第3回 |
大石 和欣
(放送大学准教授) |
エミリー・ブロンテ
『嵐が丘』 |
・ 18世紀以降の女流小説の興隆。
・ 語りの形態。
・ 崇高美に見るロマン主義的風景。
・ 屋根裏の女たち
— 特に財産権をめぐる女性差別の問題。
・ 映画でみる小説の面白さと虚しさ。 |
第4回 |
沼野 充義
(東京大学大学院教授) |
ドストエフスキー
『罪と罰』 |
・ ドストエフスキーの日本でのこれまでの読まれ方。
・「犯罪小説」であると同時に、
形而上的観念の小説でもある『罪と罰』。
・ ドストエフスキーの独自のリアリズムと幻想。
・ ペテルブルクを舞台とした都会小説。
・ 繊細な言葉の芸術としてのテキスト。 |
第5回 |
沼野 充義
(東京大学大学院教授) |
チェーホフ
『ワーニカ』
『可愛い女』
『犬を連れた奥さん』 |
・ チェーホフの短編のうち特に『ワーニカ』
『可愛い女』『犬を連れた奥さん』の3篇を
取り上げ、その魅力と現代的意義について考える。
・ 「手紙は届かない」「可愛い女は本当に
可愛いか?」「愛はいつ始まるのか?」
・ チェーホフは人情味豊かなユーモアとペーソスの
作家だったのか? |
第6回 |
柴田 元幸
(東京大学大学院教授) |
ハーマン・メルヴィル
『書写人バートルビー』 |
・ アメリカ精神の陰画。
・ バートルビーとは何者か。
・ 壁・墓場の意味。
・ 語り手の(そして我々の)中で何が変わるか? |
第7回 |
柴田 元幸
(東京大学大学院教授) |
マーク・トウェイン
『ハックルベリー・
フィンの冒険』 |
・ 南北戦争後のアメリカ — 郷愁の発生。
・ トム・ソーヤーとハック・フィンの違い。
・ 文体の新しさ・重要性。
・ ユーモアとメランコリー。 |
第8回 |
工藤 庸子
(放送大学教授) |
プルースト
『失われた時を求めて』
(一) |
・「記憶」とは何か —「無意志的な記憶」と
「知性の記憶」について。
・ マドレーヌのエピソードを読む。
・ 「見出された時」という奇蹟。
・ 物語をいかに書き始めるか。
・ 眠りと目覚めと「身体の記憶」。 |
第9回 |
工藤 庸子
(放送大学教授) |
プルースト
『失われた時を求めて』
(二) |
・ 人生について考える「モラリスト」の小説。
・ 身近な人間類型としての登場人物たち。
・ 悲劇の描き方と喜劇の混在 — 祖母の死をめぐって。
・「心の間歇」 — 悲しみと忘却と甦る記憶。 |
第10回 |
大石 和欣
(放送大学准教授)
ゲスト 丹治 愛
(東京大学大学院教授) |
ヴァージニア・ウルフ
『ダロウェイ夫人』 |
・ 小説の技法と「意識の流れ」。
・ 女流小説の伝統とフェミニズムの曖昧さ。
・ シネマトグラフィーと小説。
・ 第一次世界大戦後のイギリスと文学。 |
第11回 |
池内 紀
(ドイツ文学者) |
カフカ
『変身』 |
・ 無名のサラリーマン作家としての生涯。
・ 平凡な営業マンの日常におきた「変身」という事件。
・ 虫男のおかしさ — 変身ぶりの不思議と
当人が不思議に思わぬことの不思議。
・ 身近なテーマとしての「変身」。 |
第12回 |
池内 紀
(ドイツ文学者) |
カフカ
『断食芸人』 |
・ 実在した「断食芸」— 何もしない、
食べることすらしないという芸。
・ なぜ断食は40日なのか。
・ カフカの笑い。
・ 断食芸人の死と作者の死。 |
第13回 |
放送教材
和田 忠彦
(東京外国語大学教授)
印刷教材
工藤 庸子
(放送大学教授) |
イタロ・カルヴィーノ
『魔法の庭』
『楽しみはつづかない』 |
・ 戦争体験はどのように物語となったのか。
・ 子どものまなざしが教えるもの。
・ 民話との出会いから空想と歴史の融合へ。
・ 短篇か長編か — 表現形式の選択をめぐって。 |
第14回 |
放送教材
和田 忠彦
(東京外国語大学教授)
印刷教材
工藤 庸子
(放送大学教授) |
イタロ・カルヴィーノ
『ある夫婦の冒険』
『ある詩人の冒険』 |
・ 小説という形式そのものへの問い。
・「ポストモダン」という魔法の効き目。
・ 果てしない断片化の先に待つ物語とは。
・ 詩か小説か —「不在」と「ことば」。 |
第15回 |
工藤 庸子
(放送大学教授) |
(まとめ)
読書の愉しみ |
・ 全体の復習をかねて
「文学の読み方・語り方」を考える。
・ 作品分析の基礎概念
— 物語の構造と作中人物の描き方。
・ イタロ・カルヴィーノ — 「古典」とは何か。
・ プルーストの読書論 — 「友愛としての読書」。 |