4.原子・分子クラスターに見られる分子間相互作用

 前述のように,加圧した気体をノズルから吹き出してビームにすると,原子あるいは分子は相互の引力によって何個か寄り集まって会合体を形成する。

それらの会合体を総称してクラスターとよび,構成する粒子の数をサイズとよぶ。

クラスターがさらに成長すると,肉眼でも見えるようなサイズの分子集合体となる(これをバルクの状態という)。

超音速ビームとレーザーの実験技術および量子化学理論の進歩によって,クラスターの研究は最近急速に発展し,興味深い事実がつぎつぎと発見されている。

それらの研究によると,クラスターの構造と物性はサイズによって著しく変化し,しかもその変化は一様ではなく,特徴的な様相を示しながらバルクに近づくことが多い。

クラスターは分子とバルクの集合体との橋渡しとなる重要な物質である。

例えば以下に記すように,水の分子が集まってクラスターに成長する過程は,水蒸気が凝縮して水や氷が作られる過程に相当し,基礎的にも応用的にも極めて重要な問題である。

また,炭素原子のクラスターが成長して「すす」が作られる過程についても,最近くわしく研究されている。

この問題については,次の第15章で改めて説明する。