6.元素の周期律と物質の性質




 物質の性質を,構成元素に結び付けて考えると,多くの物質を整理するのに便利である。

表1-5と元素周期表との関係を概観し,本科目の学習計画をたてよう。



(1)元素周期表と元素の分類



 元素をその単体や化合物の性質に基づいて分類する試みは多くの人々によってなされたが,周期律を経験則として提唱し,それを示す「元素周期表」を与えたのはメンデレーエフである。

周期律はその後の新元素発見により証明され,また原子物理学の発展により基盤を与えられ,周期表は元素に関する知識を体系化する基礎となった。(基礎化学第15回)

周期表には色々の表示法があり,図1-2と本文前付け(p.12)の表では,異なる表示方法を用いた。

 周期表に基づく元素の分類を表1-6に示した。



原子の最も基本的な性質の一つである電気陰性度と周期表の関係をみると,周期表で右に行くほど,また同族では上に行くほど電気険性度は大となる。

金属元素と非金属元素との境界線は電気陰性度1.9付近に引くのが合理的である。

境界線付近の元素は金属性,非金属性両方の単体をつくるなど独特の性質を示し,1本の線で区別するのは適当でなく,境界領域として考える方が実際的である。(第5回)

(2)物質分類と周期表との関係



 銅は銅原子が多数集まって生じた結晶で,比較的軟らかく電流をよく導く典型的な金属である。

電流を導きやすい性質は原子が金属結合で結び合わされた時に現れる。

銅がこのような結合を生じやすいのは銅原子の個性による。

金属結合をもつ物質でも銅より硬いもの,銅ほどには電流を通さないものもあるが,金属の特性は電気陰性度の小さい金属原子どうしが結合する時に現れる。

 一方,塩化ビニルでは炭素・水素・塩素各原子が結合して高分子化合物をつくっており,軟らかく成形しやすいプラスチックで,電流を通さないため,絶縁材料として優れている。

炭素・水素・塩素のような非金属元素の原子が共有結合で結び合わされたときは,軟らかくて電導性の低い物質を与える傾向がある。

それらの中でも,比較的丈夫で,長持ちするのが塩化ビニルである。

 これらは,「物質の性質はそれを構成する原子の種類と,それらの組合せで決まる」例である。

表1-5と1-6は異なった観点から整理された表であるが,きわめて密接な関係が存在する。

どのような相手原子とどのように結合するかは各原子の最も基本的な個性であるから,原子の種類によって,どのような化合物をつくりやすいかが決まってしまうのは当然である。

(3)本科目の構成



 物質の性質はそれを構成する原子の種類とその結び付き方で決定されるが,原子の種類によってどのような相手とどのように結合するかについても顕著な傾向がある。

そこでこの科目では物質を構成する元素の種類に着目し,第2回以降を表1-7のように構成する。



 第1回に示した表と図のうち,次のものは次回以後でも必要に応じ参照できるよう準備しておくとよい。
  表1-1,1-3,1-4 図1-1,1-2 本文前付けの表2種(p.11,12)



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