卒業生の体験談(50音順、2007年9月記) 学習センターの活動(2010年9月記)
私はもともと「人間が好き」で、カウンセリングの基礎を学ぶことから始めて、リスニング・スキル、カウンセリング技術のトレーニングを積み重ね、所属するNPOの理事長でありセラピストでもある方のスーパービジョンを受け続けてきました。しかし、体験を重ねるに連れて、人の心に携わるということが、誰にでも出来そうでいながら、そうではない難しさを持ったものであることを痛感するようになっていきました。 そこで、放送大学に入学し心理学を中心に学び、卒業と同時に認定心理士資格をも取得しました。認定心理士資格取得には、臨床心理学以外の様々な分野の心理学を学ぶことが義務付けられているため、実践の中では知らなかった多方面の心理学に触れる機会を得ることが出来ました。カウンセラーとして他者理解をするためには、その人を多角的に見ることが欠かせませんが、多様な心理学を学ぶことは、人を多角的に見る洞察力を得る上で、大変有意義であったと思います。また、心理学を学んだことは、自分自身を知る上でも大いに役立ったように思います。 私は現在「NPO法人 家族の心のケアを支援する会」で、カウンセリングとリスニングスキル講座の開催などの活動を行っております。その他、個人的に病院や老人ホームで主に高齢者のお話相手をさせていただいています。複雑な現代社会の中で、様々な悩みを持っている相談者や人生の喜怒哀楽を経て、心身両面に不安を抱えている高齢の方々を目の前にして、常に相手の「今、ここで」の感情を大切にして向き合うという基本姿勢を第一にしつつ、問題解決に対応することを心がけています。 「人は人を支えているようで支えられている」という実感を日々持ちながら、悩みや不安の中にいる人と共に歩み、その方に「心の平和」が一日も早く訪れることを願っています。
私が放送大学において、認定心理士資格の取得を目指したのは、仕事で必要だということが一つの理由です。 私の勤め先はNASVA (ナスバ)独立行政法人自動車事故対策機構です。自動車事故対策機構は、自動車事故の発生の防止と事故による被害者救済事業を目的として、@自動車事故の発生防止、A自動車アセスメント情報の提供B自動車事故による被害者保護の増進等の業務を行っています。 自動車事故発生防止の業務の1つとして、自動車運転者(主にバス、ハイヤー・タクシー、トラックなどの職業運転者)に対して運転適性診断を行い、運転上マイナスに作用する特性があればそれを自覚し、改善を図るようにコメントを付し、カウンセリングする業務を行っています。これは運転適性診断を受診した運転者に自分自身の日頃の運転ぶりを振り返ってもらい、自ら運転上のマイナスになる点に気づいてもらえるよう、またプラスになる点は継続してもらうように援助するというものです。その際には、カウンセリングの基本とされる「傾聴」「受容」「共感的理解」の態度で受診者に接するよう、心がけています。 事故を起こした運転者は、事故原因など自分ではなかなか分からないことが多いので、このわからないことをわかろうと努力するのがカウンセリングの技法の活用になるのです。事故状況や運転者の気持ちなどの言い分を真剣に聞き取ろうと、日々努力しています。 さらに交通心理学の知識に基づいた運転者行動のアドバイスやコーチングなど心理学を活用した指導教育もしています。最近ではブレーン・ストーミング・KJ法などを活用したコンサルティングやロールプレイングによる講座を開催したりしています。大学で学んだ応用心理学、社会心理学、臨床心理学など認定心理士資格取得の中で学んだことを実践で活用しているのです。 また、自動車事故による被害者援護業務では、自動車事故により重度後遺障害者になった被害者ご家族や自動車事故により交通遺児になったお子様とそのご家族の方に対しての相談など幅広い業務の中で心理学の知識を生かしています。 認定心理士資格は、心理学の専門職としては、あくまでも基礎的資格であり、私自身も認定心理士以外に産業カウンセラー、交通心理士資格を有しています。しかし、それらの資格を得る上での基礎として、認定心理士資格は役立っており、また心理学を中心とした自分の学習計画をたてる目安にもなりました。 私は、放送大学では大学院文化科学研究科教育開発プログラムにて 3 年間交通心理学などについての研究をし、今年 3 月に修了することができました。 放送大学 3 年間、大学院 3 年間の 6 年間楽しく勉強することができました。 この場をお借りしまして、星先生、神作先生、太田先生、そして教育開発プログラム院生の皆さんにお礼申し上げます。 この経験を次の目標に向けて、自分自身の研鑚に努めたいと考えております。 五味 志津子 平成 14年度に放送大学を卒業し、認定心理士の資格を取得してから4年経ちます。現在 T 大学付属病院で看護師をしながら心理士の仕事も兼ねてきました。 認定心理士を取るきっかけは、始め教育者としての道を進もうと放送大学に入学したのですが、その過程で心理学を学び、看護者・教育者の原点は心理学と思うようになったこと、認定心理士や臨床心理士という資格がある事を知って、この資格を将来生かす事が出来るのではないだろうかと思ったからです。 心理学を学んでいる間、お世話になった T 大学付属病院看護部長(当時は副看護部長)とお話しする機会があり、現在心理学を学んでいる事を話した所、これからの時代、スタッフに対するカウンセリングが必要な事、そのカウンセリングには職場・業務内容を知っている人が必要である事等のお話を頂き、ご恩返しにもなるのではと、 T 大学への復帰を決めました。最初は手探り状態で、どのような形が良いのか模索しながらでしたが、看護部長を始め、外来師長・外来スタッフの皆さんより支援を頂き、楽しく仕事をさせていただいてます。以下は現在の業務体制です。 ?カウンセリングは主にスタッフを対象にしています。きちんと時間を決めて話を聞く事もありますが、看護業務もあり、仕事の合間に今現在で困っている事や将来の事に関しての相談を受けています。その場で解決したい!と願うスタッフが多いのですが、相談内容のほとんどが<将来的にどうしたいかの意向の確認・ある程度の示唆をする>事が多いでしょうか。 私が今居る外来のブースが、一つ一つ区切られたお部屋になっており、業務が一段落つくと1対1以外にもグループで話し合うのに適しています。 Dr との談話もしやすいため、ちょっと寄ってみた!という感覚で来訪する方も多いです。 更に、“コミュニケーションについて”・“事故を防ぐためのチーム作りについて”等の学習会を開き、少しでも心理学という学問について、皆さんが興味を持ち、実際の生活に取り入れて頂けるような取り組みもなされています。 また、救急対応もしているため、患者家族の方々や精神疾患の患者さんが来院した際の、 Dr との相談・連絡等のリエゾン的な役割も兼ねており、他部門との連携を潤滑にする事も業務の一つになっています。? 私の場合は、認定心理士を取得したことがきっかけで、看護師・心理士として働く機会を得ましたが、認定心理士としての資格を病院内で生かせるかどうかは、それぞれの病院の体制によると思います。私が今いる T 大学付属病院は、向上心がある方や資格を持っている方には出来るだけそれを生かそうとする体制であるため、私の様な業務体制も可能になったのです。 これから認定心理士を目指す看護師その他の医療職の皆様。どんな体制であれ理解者は必ずおります。そういった方々と共に、ご自分が描く医療者兼心理士の仕事を確立して頂ければと願います。 岡山学習センター「日常の心理」クラブ 岡山学習センターの学生サークルの一つ「日常の心理」クラブは、平成19年5月に発足以来、3年半ほどのまだ歴史の浅いクラブです。日常生活のなかで、より心豊かに生きるために“自分を活かし人をも活かす日常の心理講座”をクラブの指針と掲げ、それを合言葉に、毎月1回講座活動を行っています。 その様子を当時の事務室長様が、学習センター機関誌の記事として、毎回取り上げてくださっているうちに、学生さんの中から、「研究会に参加させてほしい。」「男はダメですか?」「資格がないとだめですか?」など、次々問い合わせをいただき、それならばいっそうクラブとして登録し、名前も性別に関係のない「日常の心理」クラブにしようとの話になり、なぜかその時、会の中心のFさんから私にその命が下り、クラブ申請手続きに挑みました。 しかし連日、夜を徹しての規約づくりなど孤独な作業、また人集めなどにも相当苦労をしながらの申請でした。でもそれだけに、本部からクラブの認可をいただいた時のうれしかったこと。あの時の喜びは、今でも忘れることはできません。
クラブ申請直前は10人に満たなかった会員数も、資格取得にこだわらない人集めのおかげで、発足時は20余名、そして現在40余名の会員が、毎月の講座を楽しみに集います。 つい最近の9月講座では、「生命のシステム理解による健康維持」と題し、「心の持ち方は、遺伝子のあり方に大きく影響し、楽しい・うれしい・感動するなどの思いを持つことが、良い遺伝子を目覚めさせる。またタンパク質はアミノ酸で音楽を奏でる。」など、免疫学も含めた「音薬(オンヤク)療法」のお話で、理系職の方による興味深い講座でした。 また8月は、「対面アート」と称し、2人ペアを組み、お互いリーダーとサブリーダーになって、画用紙に線を描き、サブがどこまでリーダーに添え、リーダーを生かすことができたかなどの心理分析をしていくという、とても楽しい和気あいあいとしたものでした。このときの講師は、先述のFさん。この日の講座は、放送大学 “大学の窓”の番組で取り上げていただき、番組担当の宮田アナウンサーさんも講座にご参加くださり、社会貢献しているサークルの一つとして、8月末に全国放映してくださいました。 また昨年度は、学長裁量経費をいただいての、一連の「実践的心理学講座」を、わがクラブに委ねられ、ちょっと知り合いの、精神科医、大学教授、「いのちの電話」や内観療法のトップの方々などに厚かましいお願いをして、ご快諾をいただいた後、何度もメールや電話で打ち合わせを重ねての、実現の運びとなりました。 キリスト教神父さまの内観講座を初め、カウンセリング、認知療法など、1回2日間の連続講座全6回も無事終えられたことは、センター長様、事務室長様の多大なご指導と支援のおかげです。更に毎回多くの一般市民の受講者様を迎えることができ、また多くの方のご協力頂けたことも誠にありがたい貴重な体験でした。その中で、多くの学びを頂きました。 この連続講座の第5回目は、センター長様がご依頼くださって、本部の星薫先生にわざわざ岡山までお越しいただき、「職場で活かせる認定心理士」の演題で講演をいただけたことは、本当に光栄なことでした。身近にお目にかかれた星先生のソフトな優しさが、そして高貴なオーラーが、今も私の眼に焼き付いて離れません。とてもいい思い出となりました。 わが「日常の心理」クラブに入会される方は、もちろん心理学に関心を持たれている方々ですが、最近は先輩に続けとばかりに、認定心理士資格や産業カウンセラー資格に関心を持たれる方も、だんだん増えています。それだけ世間には、心に問題を抱えていらっしゃる方が多くなり、これも社会的なニーズなのかなと思ったりもしています。 またその他のクラブ活動で、年1度岡山大学の大学祭に終日参加して、数種の“心理チェック”を若い岡大学生さん相手に行い、特に“恋愛チェック”など毎年好評を頂いています。 一方、この「日常の心理」クラブの副会長で、認定心理士資格、産業カウンセラー資格などを持っていて、昨年、NPO法人を立ち上げた人がいます。先出のFさんです。 彼女は先述のとおり我がクラブの前身、「女のカウンセリング研究会」のもとを作った人でもありますが、彼女の立ち上げたNPO法人「マザーリーフ」は、理事長の彼女以下理事13名。会員約50名くらいの団体です。その中に10個近くの事業を持ち、子育て支援から、高齢者までの、人間生活のすべてにかかわる支援を目指し、そのスタッフ養成のための講座に力を入れています。傾聴講座など市民だれもが、無料で受講できるようにと、理事長みずから企画書を作成、助成金を申請して、現在数多くの無料講座が実現できています。 この「マザーリーフ」の理事13人のうち、放送大学の卒業生で認定心理士資格を持っている者が半数近くいて、各事業のリーダーや、講座講師などを務めています。 この「マザーリーフ」の会員の希望者には、理事長の勧めで放送大学に入学、卒業し、認定心理士資格を取り、またこの会で活躍するというよい循環もできています。 また一方、「日常の心理」クラブ会員の中にも「マザーリーフ」の会員となり、そちらでも傾聴や、高齢者生きがい作り、コラージュなどの勉強を重ねている人もたくさんいます。 このように両方の会がお互いタイアップし、また個人的にも「マザーリーフ」の理事長で「日常の心理」クラブ副会長であるFさんと、「日常の心理」クラブ会長で「マザーリーフ」の理事の一人である私とは、本当の仲間という意識で、お互い助け助けられて、微力ながら共に、各々の活動を続けています。この両会がお互いタイアップしながら社会貢献をしているサークルということで、恥ずかしながら先の“大学の窓”での放映をいただいたものです。 来る11月のクラブ例会は、「マザーリーフ」の企画に便乗させていただいて、自然の中での一泊研修を企画し、2学期新入会員の歓迎会も兼ねた、楽しみな計画にしています。 これからも、放送大学岡山学習センター「日常の心理」クラブと、NPO法人「マザーリーフ」とのタイアップで、認定心理士資格取得者を増やし、共にしっかり勉強し育ちあって、この学びを社会へ還元でき、活かしていけるよう、がんばっていきたいと思っています。 岡山学習センター「日常の心理」クラブ ![]() |