3.原子核の基本的性質




 原子の基本的性質には原子核に由来するものと,電子に基づくものとがある。

通常観察される性質は電子の世界の現象である。

しかし原子核が何個の陽子をもつかは原子の個性を決定する要素であり,また原子の質量も原子核の性質である。(映像では簡単にすませる)

(1)原子核に基づく性質



 原子の性質のうち,原子核からくる性質として最も重要なのは原子核の正電荷数と質量である。

そのほか原子核の核スピンなども無視できないことがある。

一方,特殊な原子核はひとりでに他の原子核に変化して行くことがある。(放射性)

またきわめてエネルギーの高い荷電粒子や,中性子にあうと原子核反応が起こる。

これら原子核そのものの性質は別の科目で扱われる。

原子核は,陽子(正電荷をもち,質量は約10-24g)と中性子(無電荷,質量は陽子にほぼ同じ)からなる。

原子核中の陽子数は原子番号であり,原子の種類はこの数により決まる。

原子核中の陽子数は同じでも,中性子数の異なる何種かの原子核が存在する場合,それらを互いに同位体と呼ぶ。

原子としての基本的性質は同じで,後述の元素周期表でも同じ位置を占めるという意味である。

中性子数が異なると原子核の質量には差が現れる。

電子1個の質量は約10-27gで,陽子質量の約1860分の1に過ぎず,原子の質量はほぼ原子核の質量に等しい。(しかし原子の正確な質量は,原子核の正電荷を中和する数の電子をもつ原子―中性原子―の質量で示す。)
 
同位体を区別するには陽子数と中性子数の和を示す。

この整数を質量数という。

例えば6番元素炭素の原子で,中性子6個および7個からなる原子核をもつ同位体を,炭素-12,炭素-13のように呼び,元素記号の左肩にこの数字を書く。(12C, 13C)

通常は同位体相互間では性質に差がないので,同種原子という時には同位体のことは無視する。(原子番号の小さい原子ではごく僅かの相違が認められることもあり,性質の差を同位体効果という。)

(2)同位体質量と原子量



 個々の同位体原子の質量には差がある。

上記2種の炭素同位体原子の質量はそれぞれ,19.9268および21.5929×10-24gである。

原子個々の質量を示すには「原子質量単位」(単位記号u)を使用する。

1uは1.66057×10-24gで,上記2種の炭素同位体原子の質量はそれぞれ,12(端数なし),13.0034uとなる。

種々の元素の個々の同位体原子の質量を原子質量単位で表した数値を「同位体質量」と呼ぶ。 

複数の同位体からなる元素の場合,各同位体含有率は一定であるから,きわめて多数の原子がある場合,原子の質量は平均値として一定となる。

この平均値を原子量と呼ぶ。

個々の同位体質量と各同位体の存在比(炭素では98.89および0.011%)に基づいて計算される。

12×0.9889+13.0034×0.011=12.011

  原子の質量は原子を特色づける数値として,19世紀以来用いられ,正しい数値を求める試みが国際協力事業として続けられてきた。

その結果質量数12の炭素原子の質量を基準とする相対値を使用することが合意され,世界中で同一の原子量が使用されている。

原子量は相対原子質量とも呼ばれる。

  ただ1種の同位体からなる元素の原子量は同位体質量が原子量となる。

その値の精度は高く,小数点以下4桁まで信頼できる数値が得られる。(フッ素,ナトリウム,アルミニウム,金など)

2種以上の同位体からなる場合は,原子量の精度は同位体存在比の測定精度により決定され,多くの場合小数点以下3桁までしか得られない。

また,ホウ素,硫黄のように,自然界での存在比が試料によって異なり,精度が低くなる場合もある。



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