7 溶液
この章の目的は,二成分が共存する物質系の相平衡の問題を考えることにある.
二成分が溶液や固溶体のように一様な状態をもたらすか,また,二相に分離して存在するかは相平衡の条件によって定まる.
分留や凝固点降下,浸透圧などの現象は物質をとり扱う上で大切な事柄である.それらは,相平衡条件の二成分系への応用問題である.
1.二成分系の相律
前章で導いた相律を二成分系(C = 2)へ応用しよう.相律はF = C - P + 2であるから
(7.1)
となる.
したがって,
の四つの場合がある.
二成分系では自由度の最大数は3であるから,温度,圧力,組成の三つの示強性状態変数によってすべての平衡関係を表すことができる.
二成分系の組成は,一つの成分のモル分率または質量百分率などによって表される.
もう一方の成分のモル分率や質量百分率は自動的に決まる.
二成分系の状態図は図7-1のように温度,圧力,組成を座標軸にして記述できる.
しかし,このような三次元で状態図を示すのは便利ではない.
そこで,普通には三つの変数の一つを一定とし,他の二つの変数を座標軸にした平面図が用いられる.
それらは,圧力−組成図(温度一定),温度−組成図(圧力一定),圧力−温度図(組成一定)である.
これらは図7-1の立体図の三つの断面図に相当する.普通,二成分系の状態図として前の二者がもっともよく用いられる.