3.二成分系の液相−液相平衡
●液体の相互溶解
二種類の液体を混合するとき次の三つの場合がある.
無制限に溶解し合う場合 前節でとり上げた二硫化炭素−ベンゼン系,アセトン−二硫化炭素系など二成分がどんな割合でも混合する.
部分的に溶解し合う場合 ジエチルエーテルを水に加えると,少量であれば水に溶解して一つの液相となる.しかし,さらにエーテルを加えると二層となる.上部の層はエーテルに少量水が溶けた液相,下層は水に少量のエーテルが溶けた液相である.二つの液体が溶け合う様子は温度にも依存する.
完全に溶解し合わない場合 水銀と水のようにそれぞれが独立に存在する.
●臨界共溶温度
温度によって二つの液体が自由に溶け合ったり,部分的に溶け合ったりすることがある.
図7-7に水−フェノール系の温度−組成図を示す.
ここでは,圧力を一定(1 atm)としている.
二成分系の相律の自由度は(7.1)式から圧力の分の1つを除いて,となる.
一つの液相が共存するときは,=2で,温度も組成も自由に変えることができる.
二つの液相が共存するときは=1である.
すなわち,温度を指定すれば,二つの液相の組成は決まる.図7-7のと記した領域では二つの液相が共存する.
その外の領域では一つの液相が存在する.
二相領域内の一点Aをとるとき,Aを通った水平線を引き,二つの曲線と交わる点をB,Cとする.
この温度ではA点の組成に相当する系は二つの液相に分離し,それぞれの組成は点B,Cで与えられる.
これが二つの液体の相互溶解度である.
二つの液相の相対的な量は「てこの規則」によって定められる.
温度を高めると,相互溶解度が増大し,二つの液相の組成は次第に近づき,極大点Mの温度で両者は一致する.
この温度以上では二つの液体は無制限に溶解し合うようになる.
このような温度は臨界共溶温度という.
この場合,二つの液相の存在する温度の上限であるから上部臨界共溶温度という.
温度を下げると二つの液体が自由に溶け合うようになる場合もある.この温度は下部臨界共溶温度という.