若者支援機関のタイプ

当研究会メンバーが2007年から2009年までに訪問・調査した海外の若者政策・実践を紹介します。今後も随時、調査結果の記事をアップしていく予定です。

フィンランド

フィンランドには、2007年11月と2009年2月に訪問しました。
ヘルシンキ市や職業安定所などの行政組織、職業学校(日本の専門高校にあたる)のほか、アプレンティスシップ(徒弟制、職場で働きながら学校で学ぶ)、ワークショップ(職業学校をドロップアウトした(しそうな)若者のための職業訓練)、社会的企業(就労困難者を一定割合採用する企業への社会的支援)、起業家支援制度などの多様な社会への移行を支援する機関、ユースハウス(ユースセンター)、グループホーム(日本の児童養護施設に類似)など、職業に限らず若者の生活や活動を支える実践現場を視察しました。
フィンランドは、国際的に見て高い学力が注目されていますが、個人の多様性に応じた多様な支援の仕組みを、職業支援やユースワーク、福祉など、学校以外の領域の専門職の自由な裁量と、それを含めた国や行政への信頼をベースとした手厚い財政的支援によって、可能にしている印象でした。
とくに、必ずしも強く職業や資格へ水路づけるわけではなく、手厚い手当てを支給しながら、若者の興味に即した訓練を受け、ゆったりとした居場所的な空間をとおして、緩く学校や他の訓練の場へとつないでいくワークショップという仕組みは、フィンランドの若者政策を象徴していると言えるかもしれません。

ニュージーランド

ニュージーランドには、オークランドを中心に、2009年9月に訪問しました。
国の教育省や青年発達省、公立高校のほか、若者を支援するNPOや多様な民間の活動を訪問、調査しました。われわれの調査では、まだこの国の若者政策の全体像を描くのは難しいですが、学校教育が多様なプログラムによって若者の多様性に対応しつつ、学校以外の領域では、民間組織への委託や、宗教をベースとした層の厚いボランタリーな活動によって、若者を支えているという印象を受けました。
とくに、キリスト教ユースワーク活動を経た若者が、学校外の若者を支援しながら、その拠点を高校の中に作りだしたBays Youth Community Trustの活動や、夜中に海岸にたまる若者への居場所づくりをしている神父キャリーさんのReal Lifeの活動は、それを象徴しているかもしれません。

イギリス

イギリスには2007年11月に訪問しました。それ以外にも、2000年代にメンバーは各自で何度かイギリスを訪問しています。イギリスは、1999年に労働党のグレアが政権に就いて以後、若者の失業や不就労問題に国を挙げて積極的な取り組みをしてきました。また、2000年代には、子どもサービスの改革に取り組んできました。13歳から19歳の若者に対する支援機関であるコネクションズやその関係機関、ユースセンターなど、青少年・若者の自立支援機関を訪問しました。また、バーミンガム市の青少年局が、国のレポート「Every Child Matters」、子ども法を受けて、どのような行政施策を進めているかを見てきました。
細分化され分断された従来の子ども・若者支援サービスを、包括的・横断的なサービスへと転換しようとする改革の流れは、日本にとっても重要なヒントになると思いました。

オーストラリア

オーストラリアはシドニーを中心に、2008年と 2009年の2回訪問しました。国の教育省、各種の職業訓練機関、子どもや若者に対する支援機関、ユースセンターを訪問しました。オーストラリアは、職業資格に対応する職業教育・職業訓練機関が発達していて、困難を抱える若者に対する支援は、職業資格の取得支援とセットになっています。また、経済給付と職業訓練と求職支援とがセットになって動いている点にも特徴があります。オーストラリアは他民族国家で、多くの移民を抱えています。移民の子どもたちの教育、社会参加、就労における諸問題に対応する民間団体が活発に活動しています。

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